公開日:2023.06.21
住宅を購入する際、新築と中古のどちらにするかで悩む人も多いかもしれません。この記事では、国土交通省の調査から、日本国内の中古住宅市場について分析したうえで、どのような理由で新築と中古を選んでいるのかを紹介します。
日本は国際的に見ても中古住宅より新築住宅を好む国民性であることが、国土交通省の「平成30年住宅・土地統計調査の集計結果」から分かっています。調査結果は以下のとおりです。
図:中古住宅流通シェアの国際比較
※調査結果から著者が作成
市場規模は国によって異なりますが、日本は中古住宅が占める流通戸数の割合が、海外と比較して圧倒的に大きくなっています。この結果から日本は国際的に見ても新築志向であることが分かります。
国土交通省が実施した「令和4年度住宅市場動向調査」では、新築の戸建(分譲)と集合住宅(分譲)に住み替えた人が、なぜ中古住宅を選ばなかったのかを集計しています。それぞれの結果から、日本で中古住宅が選ばれない理由を見ていきましょう。
まず、分譲住宅(戸建)に住み替えた人の回答は以下のとおりです。
図:分譲住宅(戸建)に住み替えた人の回答結果
※調査結果から著者が作成
続いて、分譲住宅(集合住宅)に住み替えた人の回答は以下のとおりです。
図:分譲住宅(集合住宅)に住み替えた人の回答結果
※調査結果から著者が作成
戸建と集合住宅に共通して、「せっかくのマイホームは新築にしたい」がかなり多いことが分かります。特に戸建の方が顕著で、戸建を検討する人は特に、中古より新築と考えている人が多いことが分かります。
一方集合住宅では、戸建と比べて「給排水管などの老朽化が懸念されたから」がやや多くなっています。集合住宅の場合、大規模な給排水管工事を行うのは困難なため、不安に感じてしまう人が多いと推測されます。
戸建と集合住宅の2つに分けて結果を確認しましたが、ここでも「せっかくのマイホームは新築にしたい」という理由が多くを占めることが分かりました。
それ以外の理由として多いのは、隠れた不具合があるのではないか、その後のリフォーム費用やメンテナンス費用が結局かなりかかるのではないか、といった理由でした。こうした中古住宅に対する不安が、日本の新築志向にも繋がっているのではないでしょうか。
ここまでの結果を踏まえると、日本国内の中古住宅取引は需要があまりなく、衰退しているかのように思えますが、実態は異なります。国土交通省の「平成30年住宅・土地統計調査の集計結果」によると、日本国内の新築住宅と中古住宅の取引戸数は以下のように推移しています。
図:日本の中古住宅取引数の推移(万戸)
※調査結果から著者が作成
このように、新築住宅が多数を占めますが、中古住宅の取引戸数はずっと横ばいとなっています。このように、日本は新築志向である一方で、中古住宅にも常に一定の需要があることが分かります。
国土交通省が実施した「令和4年度住宅市場動向調査」では、中古住宅に住み替えた人が、なぜ中古住宅を選んだのかについても集計しています。集計結果から、中古住宅が常に一定の需要がある理由について分析します。
まず、中古住宅(戸建)に住み替えた人の回答は以下のとおりです。
図:中古住宅(戸建)に住み替えた人の回答結果
※調査結果から著者が作成
続いて、中古住宅(集合住宅)に住み替えた人の回答は以下のとおりです。
図:中古住宅(集合住宅)に住み替えた人の回答結果
※調査結果から著者が作成
戸建と集合住宅に共通して、「予算的に見て中古住宅が手頃だったから」が多数を占めています。新築の値上がりが激しく、予算の都合で中古住宅を選ぶ人が多いことが推測されます。
また、そういった現状の中で、リフォームを前提に購入した人や、リフォーム済みの中古住宅を購入した人が多数を占めており、中古住宅に対する不安や不満をリフォームによって解消している人が多いことも分かります。
中古住宅を選んだ理由で最も多いのは、「予算的に見て中古住宅が手頃だったから」でした。「令和4年度住宅市場動向調査」によると、各住宅の全国平均取得金額は以下のとおり推移しています。
図:各住宅の全国平均取得金額(万円)
※調査結果から著者が作成
見てのとおり、中古と新築では金額にかなりの差が生まれていることが分かります。令和4年度の結果で比較すると、戸建では1,622万円、集合住宅では2,414万円もの差があります。ここまで金額の差が生まれている以上、予算面で中古を選ばざるを得ない状況も十分に考えられます。
日本は新築志向である一方で、予算面の都合から中古住宅も一定の取引戸数を保っていることが分かりました。新築志向は未だ根強いですが、中古住宅を選んで予算を抑えつつ、リフォーム等を行うことで不安を解消し、理想の住まいを実現するのも一つの選択肢ではないでしょうか。
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