更新日: / 公開日:2022.06.22
都市計画法は、街づくりのルールを定めた法律です。都市の開発や利用に関するルールを設けることで、快適な都市生活を送れることは理解できるかもしれません。しかし、法律でどのような事項が定められているかはよくわからないのではないでしょうか。
この記事では、都市計画法の概要や定められている内容についてわかりやすく解説します。
都市計画法とは、都市計画に必要な事項について定めている法律です。都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため、土地利用や都市施設の整備、市街地の開発などに関するルールが設けられています。
都市計画法第1条では、本法律の目的を以下のように定めています。
この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
都市計画法の構成は以下のとおりです。併せて概要も紹介します。
都市計画法の目的、基本理念、国・地方公共団体や住民の責務、用語の定義が主な内容です。都市機能を確保するために、適正な制限のもとに合理的な土地利用を進めることを基本理念としています。
国・地方公共団体には都市計画の適切な遂行に努めること、住民には目的達成に協力することを求めています。
都市計画の内容や決定・変更に関する内容です。都市計画に定められる区域区分の詳細や都市施設などが説明されています。都市計画は都道府県や市町村が定めるとしており、計画の決定や変更に必要な手続きについても決められています。
開発行為や特定地域内における建築などの規制に関する内容です。無秩序に開発や建築が行われることがないように、土地利用の制限について詳細に定められています。また、開発行為や建築の許可を受けなくてはならない基準なども説明されています。
都市計画事業の認可や施行に関する内容です。誰が事業の認可を行うのか、認可や施行に必要な手続きなどについて定められています。
都道府県や市町村が施設設備予定者と締結する都市施設等設備協定、市町村長が指定できる都市計画団体の内容について定められています。また、都市計画に関する審議会や立入検査、罰則に関する説明もあります。
都市計画法で定められている主な内容を、大きく2つに分けて解説します。
都市計画法では、日本の国土を「都市計画区域」と「準都市計画区域」に分類しています。
都市計画区域は、都市として総合的に整備・開発が行われる地域のことです。原則として、都道府県が都市計画法に基づいて指定します。都道府県や市町村が策定した都市計画に基づき、都市施設の整備などが進められます。なお、2023年3月31日時点では、国土の約27%が都市計画区域に指定されており、全人口の約95%は都市計画区域内に居住しています。
都市計画法では、無秩序な開発を防止し、計画的な市街化を図るため、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分しています。どちらにも区分されていない地域を「非線引き区域」といいます。
市街化区域では、優先的かつ計画的に市街化が行われます。一方で、市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域と位置付けられており、原則として開発行為は禁止されています。
図:都市計画法による土地区分
※筆者作成
都市計画区域内の土地を利用目的によって区分し、建築物などのルールを決めて地域地区を指定しています。地域地区にはさまざまな種類がありますが、代表的なものが「用途地域」です。
市街化区域では、必ず用途地域を定めることになっています。大きく「住居地」「商業地」「工業地」の3つに区分したうえで、13種類の用途地域を定めています。各用途地域では建築物の用途や容積率、建ぺい率、高さなどが規制されており、これに反する建物は建築できません。
都市施設とは、都市生活者の利便性向上や良好な都市環境の確保のために必要な施設です。具体的には、「道路」「公園」「ごみ焼却場」「下水道」などが該当します。都市計画で都市施設の整備が決定され、その区域内に建築規制が及びます。
市街地開発事業とは、市街地を面的・計画的に開発する事業のことです。土地収用や換地といった手法により、宅地や公共施設の整備などが行われます。代表的な事業の種類に「土地区画整理事業」「市街地再開発事業」などがあります。
都市施設の整備や市街地開発事業は都市計画によって決定され、その区域内に建築規制が及ぶことになります。
都市計画区域や準都市計画区域では、無秩序な開発を防ぎ、計画的かつ持続可能な都市の発展を図るために、開発行為には都道府県知事や市長の許可が必要です。この許可制度は、地域の自然環境や住民の生活環境を守る上で非常に重要な役割を果たしています。
都市計画法第4条第12項で定めている開発行為は以下のとおりです。
第1種特定工作物とは、周辺の地域の環境の悪化をもたらす恐れがある工作物のことをいいます。また、第2種特定工作物とは、ゴルフコースや大規模な野球場や遊園地、墓地などで、建設に許可手続きが必要になります。
開発行為における規制の対象規模は、その地域によって異なります。(都市計画法第22条第2項、都市計画法施行令第19条)
詳細は下図のとおりです。
なお、図書館や公民館等の公益上必要な建築物のうち周辺の土地利用上支障がない建築を行う場合や、土地区画整理事業等の施行として行うものは規制の対象外となります。
開発許可の基準には、2つの基準があります。
技術基準は道路・公園・給排水施設等の確保、防災上の措置等に関する基準です。地方公共団体の条例で、一定の強化又は緩和、最低敷地規模に関する制限の付加が可能です。
それに対して、立地基準は市街化調整区域にのみ適用されます。市街化を抑制すべき区域であることから、許可できる開発行為を限定しています。例えば、次のようなものが挙げられます。
イ 周辺居住者の利用の用に供する公益上必要な施設又は日用品店舗等日常生活に必要な施設の用に供する目的で行う開発行為(第1号)ロ 農林水産物の処理、貯蔵、加工のための施設の用に供する目的で行う開発行為(第4号)
ハ 地区計画等の内容に適合する開発(第10号)
ニ 市街化区域に近隣接する一定の地域のうち、条例(開発許可権者が統轄す地方公共団体が定める。以下同じ。)で指定する区域において、条例で定める周辺環境の保全上支障がある用途に該当しない建築物の建築等を目的とする開発行為(第11号)
ホ 開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として、条例で区域、目的等を限り定めたもの(第12号)
へ 開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為で、あらかじめ開発審査会の議を経たもの(第14号)
出典)
・都市計画法第33条、34条(e-Gov法令検索)
・国土交通省「開発許可制度の概要」
開発許可申請の流れでは、事業者は計画書を提出し、地域の住民や関係機関からの意見も考慮されることが一般的です。
国土交通省や都道府県のWebサイトでは詳細な図が掲載されています。例えば、東京都の開発許可手続きの詳細は、都の都市整備局の資料に記載されています。
マスタープランとは、「長期的視点にたった都市の将来像を明確にし、その実現にむけての大きな道筋を明らかにするもの」とされています。都市計画法に基づき、都道府県が都市計画区域マスタープランを策定しています。
法定の都市計画マスタープランには2つの種類があります。
なお、都市計画区域内の都市計画は、マスタープランに即したものである必要があります。
市町村マスタープランは、市町村が属する都市計画区域マスタープランと市町村議会の議決を経た基本構想に即したものとなっています。
地区計画とは、それぞれの地区の特性に応じて、良好な都市環境を形成するために定められる地区レベルの都市計画です。住民の意見を反映し、その地区独自の街づくりのルールを細かく定めます。地区計画で定められるルールは以下のとおりです。
地区計画は市町村が条例に基づき、土地所有者などに意見を求めて作成します。
出典)
・国土交通省 「土地利用計画制度 都市計画法制」P.11
・東京都都市整備局「地区計画とは」
都市計画法のおかげで無秩序な開発行為が行われることなく、都市の計画的な整備を進めることができます。不動産に関する基礎知識として、都市計画法の概要を理解しておきましょう。
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