公開日:2024.04.10
ローンの元金据置は、一般的な住宅ローンなどでは用いられない返済方式の一つです。毎月の返済額の軽減が期待できる一方で、総返済額が増えるリスクもあるため、仕組みを理解したうえで利用することが大切です。
この記事では、元金据置の仕組みやメリットとデメリット、利用事例について詳しく解説します。
ローンの元金据置とは、一定期間元金を据え置き、その間利息のみを支払う返済方法です。元利均等返済などの返済方法に特約という形で使われることもあります。
代表的な返済方法である「元利均等返済」や「元金均等返済」は毎月元金を支払うのに対し、「元金据置返済」は、所定の期間、元金を据え置いたまま利息のみを支払う返済方法です。元金据置期間には上限が定められており、据置期間経過後は元利返済が始まります。
例えば、「返済期間10年のうち、元金据置期間4年」の条件でローンを組む場合、借入当初4年間は利息のみを返済し、5年目以降は元金と利息を返済することになります。
ローンの元金据置をすると、毎月の返済負担が一定期間軽減されるのがメリットです。元金据置期間は元金の支払いが不要のため、毎月の返済負担を軽減することができます。
【借入金額500万円、返済期間10年、固定金利2.0%、元利均等返済の場合】
返済方法 | 毎月の返済額 |
---|---|
元金据置期間なし | 46,007円 |
元金据置期間4年 | 4年目まで:8,333円 5年目以降:73,752円 |
出典)日本政策金融公庫「事業資金用 返済シミュレーション」で試算
子供の教育費など、まとまった資金が必要となることが明確な期間を元金据置期間とすることで、無理なくローンを利用できます。
ローンの元金据置は、総返済額が増えてしまうのがデメリットです。元金据置期間は元金が償還されないため、利息総額が増加し、結果として総返済額も増加します。また、元金据置期間がない場合と比べて、据置期間経過後は毎月の返済額が増える点にも注意が必要です。
【借入金額500万円、返済期間10年、固定金利2.0%、元利均等返済の場合】
返済方法 | 利息総額 | 返済総額 |
---|---|---|
元金据置期間なし | 520,805円 | 5,520,805円 |
元金据置期間4年 | 710,145円 | 5,710,145円 |
出典)日本政策金融公庫「事業資金用 返済シミュレーション」で試算
上記シミュレーションの場合、4年間の元金据置によって返済総額が189,340円増えています。このように、返済期間全体で見たときにはかえって返済負担が重くなる点に注意しましょう。
元金据置の活用事例をローンの種別ごとに3つ紹介します。
住宅ローンにおいても、元金据置返済が有効と考えられる場面があります。たとえば、一時的に収入が減少してしまった場合や、注文住宅で建物が完成するまでの土地先行決済での活用が考えられます。
突発的な災害や病気によって、一時的に収入が減少してしまったとき、住宅ローンの返済が難しくなることもあるでしょう。そのような時、住宅ローンを元金据置にできれば、生活を立て直すまでの当面の支払いを抑えられます。
一方で、住宅ローンで元金据置期間を設定するためには、金融機関の承諾が必要です。住宅ローン返済が難しくなった原因や返済が正常化する合理的な理由があれば、金融機関が応じてくれるかもしれませんが、必ず利用できるわけではないので、詳細は住宅ローンを組んでいる金融機関に相談しましょう。
注文住宅などで土地を購入してから、建物を建築する場合、現居の費用と新居のための土地の返済で支払いが二重になってしまいます。そのような時に、新居のための土地の返済を元金措置とすることで、毎月の返済負担を抑えられます。
ただし、土地に対する融資が元金措置にできるかどうかは、新居の住宅ローンを提供する金融機関の商品によって異なります。詳しくは、住宅ローンを組む際に、金融機関に相談してみましょう。
大学や専門学校の入学金、授業料などの支払いに教育ローンを利用する際にも、元金措置が活用できます。在学中は授業料だけでなく、一人暮らしの際の住居費や、生活費などの出費がかさむため、元金据置を利用して毎月の返済額を抑えることで、ゆとりをもって返済を進めることができます。
不動産投資ローンでは、短期的な売却を想定して元金据置返済を利用する方法があります。収益用不動産を保有期間5年以内に売却すると「短期譲渡所得」に該当し、「長期譲渡所得(保有期間5年超)」に比べて高い税率が適用されます。
5年以上保有した後の売却を想定し、保有期間は元金据置にして返済負担を抑えることで、キャッシュフローの向上が可能です。そして、保有期間が5年を超えた後に売却すれば、不動産売却時の税金対策としても活用できます。
ローンの元金据置は所定の期間、利息のみを支払うため毎月の返済負担の軽減が期待できます。教育ローンは子どもの在学中、住宅ローンは住み替えが決まるまで元金据置にすれば、ゆとりをもって返済を進められるでしょう。
ただし、元金を据え置くと総返済額は増えてしまうため、仕組みを理解したうえで利用することが大切です。
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