フラット50とは?メリット・デメリットや条件について解説

公開日:2024.12.18

フラット50は、最長50年の借り入れが可能な全期間固定金利の住宅ローンです。一般的に住宅ローンの借入期間は最長35年ですが、フラット50ならより長期の借り入れが可能です。この記事では、フラット50の概要や条件、メリット・デメリットについて解説します。

フラット50の概要

フラット50とは、長期優良住宅を取得する場合に利用できる、最長50年の全期間固定金利の住宅ローンです。一般的な住宅ローンよりも借入期間が長い分、月々の返済額を抑えることができます。

出典)フラット35「【フラット50】」

また、借入時に返済終了までの適用金利と返済額が確定し、金利上昇リスクを回避できる点も特徴です。

フラット50の対象となる住宅・技術基準

フラット50は長期優良住宅であることに加えて、フラット35の技術基準に適合している住宅が借り入れの対象です。

フラット35では、新築住宅と中古住宅でそれぞれ技術基準が定められています。物件検査に合格し、技術基準に適合した住宅であることを証明する「適合証明書」を取得したうえで、取扱金融機関へ借り入れの申し込みをしなくてはなりません。

出典)【フラット50】及び金利引継特約付き【フラット35】の技術基準の概要(新築住宅)

フラット35の適合証明書や住宅の技術基準については、以下の記事で詳しく解説しています。

フラット50の利用条件と特徴

フラット50の主な特徴として、住宅金融支援機構は次の4つを挙げています。

  • 最長50年の全期間固定金利
  • 長期優良住宅取得時に利用可能
  • 住宅ローン付きで売却が可能
  • フラット35またはフラット20との併用が可能

最長50年の借入期間を選択できるのは、申込時に30歳未満の人が対象です。30歳以上の人は、「80歳-申込時の年齢(1年未満切上げ)」が借入期間の上限となります。申込時の年齢が35歳であれば、借入期間は最長44年です。

また、長期優良住宅の特徴として、返済中に住宅を売却する場合、買主は売主が利用していた借入金利のままフラット50の債務を引き継ぐことができる「金利引継特約」を利用できます。
詳しくは以下の「フラット35のさまざまな優遇制度」の中で解説しています。


また、住宅金融支援機構ではフラット50の借入額は物件価格の9割が上限ですが、フラット35またはフラット20を併用すれば、物件価格までの借り入れを希望することが可能としています。

出典)フラット35「【フラット50】」

フラット50への借り換え

既存の住宅ローンからフラット50への借り換えも可能です。借入額は100万円以上8,000万円以下(1万円単位)で、「借換対象となる住宅ローンの残高」または「住宅金融支援機構による担保評価額の200%」のいずれか低い額が上限となります。

なお、借入期間は既存の住宅ローンの借入開始時点から数えて、最長で50年となります。

出典)【フラット35】借換融資のご利用条件

フラット50のメリット・デメリット

フラット50には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

フラット50やフラット35を申し込むには、次の総返済負担率(年収に占める年間合計返済額の割合)の基準を満たす必要があります。

年収400万円未満400万円以上
総返済負担率30%以下35%以下

出典)住宅金融支援機構「フラット50」

返済期間が長くとれるフラット50では、フラット35と比較すると総返済負担率が小さくなります。そのため、35年では基準を満たせなくても、50年ならより高額な物件の借り入れが可能になるかもしれません。

例えば、以下の条件で借入期間を50年と35年で比較すると総返済負担率(小数点第三位以下切り捨て)の違いは下表のようになります。

  • 年収:500万円
  • 借入希望額:5,000万円
  • 適用金利:1.960%(50年)、1.860%(35年)
  • 返済方法:元利均等返済
フラット50フラット35
借入期間50年35年
総返済負担率31.39%38.89%

年収500万円の人がフラット35を借りる場合は、総返済負担率35%以下の基準を超えてしまいますが、フラット50の場合は返済期間が長くなるため総返済負担率は35%以内に収まります。
そのため、フラット50を利用すれば、現在の年収ではローンを組むことが難しい高額な物件でも、購入の可能性が広がり、理想の住環境を手に入れられるかもしれません。

デメリット

フラット50は、借入期間を長くできる一方で、その他の条件が同一であれば総返済額が増加します。これは、借入期間が長期化すると月々の返済額に占める利息の割合が増加し、元金の償還が遅くなるためです。

また、フラット20やフラット35に比べると金利が高いのもデメリットです。新機構団信付きの借入金利水準は、「最新の金利情報:長期固定住宅ローン【フラット35】」をご確認ください。

フラット50を利用した場合の返済シミュレーション

ここでは、フラット50を利用した場合の返済シミュレーションを2つ紹介します。

ケース①フラット50とフラット35の毎月の返済額の比較

満29歳の人が3,000万円を借り入れる場合、フラット50とフラット35の返済シミュレーション結果はそれぞれ以下のとおりです。

フラット50フラット35
適用金利年1.960%年1.860%
借入期間50年35年
月々の返済額78,476円97,236円
総返済額47,129,266円40,880,660円
完済時年齢80歳65歳

※前提条件:2024年12月1日時点で試算。元利均等返済、ボーナス返済なし、2024年12月の最も多い金利(融資率9割以下)

月々の返済額はフラット35が約9.7万円であるのに対し、フラット50は約7.8万円に抑えられます。一方で、総返済額はフラット50のほうが約620万円増え、完済時年齢は80歳となります。

ケース②購入と賃貸の比較

新築住宅に賃貸で住む場合の家賃相場は、物件価格に対する「収益利回り」を基に算出されます。収益利回りは物件の価格に対する年間家賃収入の割合を指し、ここでは収益利回りを5%と10%の場合で見ていきます。

<5%の場合>
年間家賃収入 3,000万円 × 5% = 150万円
月額家賃 150万円 ÷ 12 = 12.5万円

<10%の場合>
年間家賃収入 3,000万円 ×10% = 300万円
月額家賃 300万円 ÷ 12 = 25万円

上記のとおり、賃貸で毎月12.5万円~25万円の家賃を支払うよりも、前述のフラット50を利用することで毎月の返済額は4.7万円~17.2万円も安く抑えることができます。

さらに、フラット50は賃貸と比較した際に次のようなメリットもあります。

  • 賃貸物件よりも優れた物件への入居可能性
  • 住宅ローン控除による税負担の軽減
  • 長期固定金利による安心感
  • 住環境の安定性と自由度

以上のように、フラット50を活用することで、賃貸と比較して毎月の住居費を抑えられるだけではなく、さまざまなメリットを享受できます。住宅ローン控除などの税制優遇措置を受けることで、さらに経済的な負担を軽減しながら理想の住まいを実現できる可能性が広がります。

また、フラット50は、将来の住み替えを視野に入れて若い世代が利用する手段としても有効です。フラット50を活用すれば、優良物件に安価で住みながら、ライフステージの変化や資産状況に応じて柔軟に住み替えを検討できる可能性が広がります。

ただし、将来売却しやすい物件や立地なのかを考えて購入することが重要です。新築住宅は価格が下落しやすい傾向にあるため注意しましょう。

まとめ

フラット50は、長期優良住宅を対象とした最長50年の全期間固定金利の住宅ローンです。借入期間が長くとれるため、フラット35よりも月々の返済額を抑えることができます。長期優良住宅を取得する予定があるなら、フラット50を検討してみてはいかがでしょうか。



執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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