公開日:2023.05.17
マンションは築年数の経過とともに建物や設備が老朽化していくため、いずれは大規模修繕工事が必要になります。大規模修繕工事は、建物の劣化や設備の交換などに対応する工事であり、マンション所有者の暮らしにも影響が出てくるものなので、あらかじめ概要を理解しておくことが大切です。
大規模修繕工事とは、建物の全体又は複数の部位について行う大規模な計画修繕工事をいいます。例えば、全面的な外部足場が必要な外壁塗装と屋上防水等を同時に行う場合などです。なお、大規模修繕工事は法律等で義務付けられたものではありません。
国土交通省が実施した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事を行っているマンションのうち、約7割が12~15年周期で大規模修繕工事を行っている、という結果が出ています。
出典)
・国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」
・国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」
大規模修繕工事は大きく3つの工事に分類できます。
建築系工事とは、マンションの建物部分を修繕するための工事です。マンションの共用部分の補修も含まれます。具体的には以下の工事が挙げられます。
大規模修繕工事のほとんどは建築系工事です。「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事の回数を重ねるにつれて、全体の大規模修繕工事費用に対する建築系工事の費用割合が増加していく、という結果が出ています。
出典)国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」
設備系工事とは、マンション内のインフラを整えるための工事です。具体的には以下の設備に対する工事が挙げられます。
「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、建築系工事と同様に大規模修繕工事の回数を重ねるにつれて、全体の大規模修繕工事費用に対する設備系工事の費用割合が増加していく、という結果が出ています。一方で、建築系工事と設備系工事のそれぞれにかかる費用を比較すると、設備系工事はかなり小さい金額となっています。
出典)国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」
仮設工事は、足場や作業員用の事務所や資材置き場など、建築系工事や設備系工事を進める前の準備にあたる工事です。マンションの修繕とは直接関係のないものの、大規模修繕工事を進めるために必ず必要です。「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事の回数を重ねるにつれて、全体の大規模修繕工事費用に対する仮設工事の費用割合が減少していく、という結果が出ています。
出典)国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」
大規模修繕工事に必要な費用は、マンションの管理組合が毎月マンション所有者から徴収する「修繕積立金」から支払われます。そのため、マンション所有者に対して急に高額な費用負担が発生するようなことはほとんどありません。一方で、毎月支払うことになる「修繕積立金」についてはしっかりと把握しておく必要があります。
国土交通省が公表している「平成30年度 マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」によると、修繕積立金の全国平均額は11,243円です。なお、過去の調査結果と比較をすると、修繕積立金は上昇傾向です。
出典)国土交通省「平成30年度 マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」
修繕積立金の積立方法は、大きく2つに分類されます。
1つ目は、月々の修繕積立金が一定である「均等積立方式」です。あらかじめ立てた長期修繕計画に基づき、必要な費用から逆算して必要額が算出されます。なお、長期修繕計画の見直しに合わせて必要な費用及び月々の修繕積立金額も調整されることがあります。全く変動しないわけではないので注意しましょう。
2つ目は、修繕の必要性に合わせて月々の修繕積立金を段階的に増額していく「段階増額積立方式」です。新築マンションであれば修繕積立金を抑えられる一方で、築年数が経つにつれて増額していくことになる、一長一短な積立方式です。急な増額によってマンション所有者の負担が増えてしまい、場合によってはトラブルになる恐れもあるので注意が必要です。
どちらの方式であっても、適切な長期修繕計画に基づいて積立が行われているかが重要です。今住んでいるマンションの長期修繕計画を確認したうえで、今後の修繕積立金の金額についても把握しておきましょう。
大規模修繕工事を行うことで、以前よりも快適な住環境を手に入れることができ、建物の資産価値を保つことにもつながります。マンション所有者である以上大規模修繕工事は他人事ではありません。マンションに住む以上、大規模修繕工事の概要をしっかり押さえ、工事に備えておきましょう。
執筆者紹介