住所変更登記等の義務化はいつから?手続き方法や注意点も解説

更新日: / 公開日:2022.11.09

不動産所有者の氏名や住所などに変更があった場合の、法務局での住所等の変更登記はこれまで任意でしたが、不動産登記法の改正により登記申請が義務化されることになりました。変更登記をしないと罰則を科される恐れもあるため、制度内容を理解しておくことが大切です。

この記事では、住所変更登記等の申請義務化の概要や注意点について解説します。

住所変更登記等の申請義務化の概要

住所等の変更登記とは、不動産の所有者である登記名義人の氏名や住所などに変更があった際に行う登記手続きのことです。2021年(令和3年)4月に成立した不動産登記法の改正により、住所等の変更登記の申請が義務化されました。2023年11月現在も施行日は確定していませんが、2026年(令和8年)4月までに施行されることは決定しています。

申請が義務化された理由

住所等の変更登記の申請が義務化された背景には、所有者不明土地問題があります。近年では、所有者やその所在が分からない「所有者不明土地」が増加傾向です

国土交通省の調査によれば、全国の土地のうち所有者不明土地は24%で、発生原因の33%を「住所変更登記の未了」が占めています。これまで住所等の変更登記は任意であり、そのまま放置されることが多くありました。そのため、所有者不明土地の解消や発生予防に向けて申請が義務化されました。

申請義務の内容

所有不動産の売却や転居などにより、登記名義人の住所等に変更が生じた場合は、その住所等の変更日から2年以内に変更登記の申請をしなくてはなりません。正当な理由なく申請義務を怠った場合は、5万円以下の過料の適用対象となります。

正当な理由の具体的な類型、過料を科す手続きの詳細については、通達や省令等で明確化される予定です。

出典)法務省民事局「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要 P.2」

住所変更登記等の申請義務化の注意点

住所変更登記等の申請義務化については経過措置があり、施行日前に住所等の変更が発生していたケースについても適用されます。施行日前の住所等変更については、以下のように施行日から2年間が申請義務の履行期間となります。

住所変更登記等の申請義務化の注意点

施行日前に住所等の変更が生じた場合でも、申請義務が発生することに注意しましょう

出典)法務省民事局「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要」

住所等の変更登記の手続き方法

住所等の変更登記は、自分で行うか司法書士に代行してもらうかの二択で手続きを進めます。自分で行う場合は、「登記簿謄本(登記事項証明書)」「住民票」「登記申請書」などの必要書類を準備して法務局で申請手続きをします。その際は、登録免許税額分の収入印紙も必要です。

司法書士に代行してもらう場合は、手続きをすべて司法書士に任せることが可能です。ただし、司法書士報酬を支払う必要があるため、自分で行うよりもコストはかかります。司法書士によって報酬は異なるので、ホームページなどで料金を確認した上で、依頼するといいでしょう。

出典)法務局「不動産登記の申請書様式について」

法務局が職権で住所等の変更登記をする仕組みも導入される

法務局が職権で住所等の変更登記をする新たな仕組みも導入予定で、2026年(令和8年)4月までに施行されます。法務局の登記官が、個人の場合は「住基ネット」、法人の場合は「商業・法人登記システム」から取得した情報に基づき、職権で変更登記ができるようになります。職権で変更登記が行われた場合は、個人・法人ともに「住所変更登記等の申請義務は履行済み」とみなされます

登記漏れや手続きにかかる手間などの理由から、基本的には職権による変更登記を了承しておくといいでしょう。一方で、詳細な手続きや費用について言及されていないので、今後の動向を注視しておきましょう。

職権による住所等の変更登記の手続き方法

個人はDV被害者等への配慮や個人情報保護の観点から、登記名義人の了解を得た場合に限り、職権による変更登記がされます。事前準備として、施行後に新たに登記名義人となる場合は、登記申請時に検索用情報を提供する必要があります。施行前に登記名義人であるケースでは、任意で検索用情報の提供が可能となる予定です。

一方、法人については、職権による変更登記の際に意思確認はありません。不動産登記法の改正に伴い、2024年(令和6年)4月1日から、登記名義人が法人の場合は会社法人等番号が登記事項となります。そのため、会社法人等番号を検索キーとして職権による変更登記を行うことが想定されています。

登記名義人への意思確認や検索用情報の提供など、具体的な手続き方法はインターネットの活用を含めて今後検討されます。現時点では、住所や氏名等の変更が生じる場合は自ら変更登記を行うと安心といえます

出典)法務省「不動産登記法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について P.13~P.15」

まとめ

所有中の不動産について住所等の変更があった場合、今後は変更登記の申請が義務化されます。2026年(令和8年)4月までに施行される予定で、施行日前の変更も適用対象です。申請義務を怠ると罰則が科されるので、必要な場合は忘れずに手続きを行いましょう。

執筆者紹介

大西 勝士(Katsushi Onishi)
金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。
<運営ブログ>
https://www.katsushi-onishi.com/

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