更新日: / 公開日:2019.02.12
不動産担保ローンとは、不動産を担保とするローン商品のことです。不動産を担保にすることで、無担保ローンと比べてまとまった金額を低金利で借り入れることが可能です。一方で、万が一返済ができなくなった場合、担保にした不動産が競売となる恐れがあるため、利用前に仕組みを理解しておくことが大切です。
この記事では、不動産担保ローンの仕組みやメリット・デメリットについて解説します。
不動産担保ローンとは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保にして、お金を借り入れられるローン商品です。金融機関によっては、本人が所有している不動産だけでなく、家族や法人名義の不動産も担保にできます。
不動産担保ローンの審査では、信用力に加えて担保不動産の価値も判断されるため、一般的な無担保ローンに比べて、まとまった金額を低金利で借り入れられます。また、資金使途は原則自由であるため、事業資金や借換資金などのさまざまな目的で利用できます。
不動産担保ローンは、一般的な無担保ローンに比べて以下のようなメリットがあります。
無担保の個人向けカードローンや法人向けビジネスローンに比べて、不動産担保ローンは低金利で借り入れられます。この情報は日本貸金業協会が公表している月次統計資料*からも分かり、消費者向けの無担保貸付が約15%であるのに対して、有担保貸付の借入金利は約4%です。
無担保のキャッシングやカードローンは、収入や他社からの借入状況などによって借入可能額が決まり、借入限度額は一般的に1,000万円程度です。一方で、不動産担保ローンは、担保不動産の評価額によって変化しますが、1億円以上の借入限度額とされていることも珍しくありません。
カーローンや教育ローンなどのローンでは、借入期間は7年や10年程度に設定されています。一方で、不動産担保ローンは、返済期間を長く設定することができ、最長35年のローンを提供しているところもあります。返済期間を長期にすれば、月々の返済額を抑えることが可能です。
ただし、返済期間が長くなるほど、利息の負担額は大きくなる点には注意が必要です。
一方で、不動産担保ローンは、一般的な無担保ローンに比べて以下のようなデメリットもあります。
無担保のキャッシングやカードローンは、数分で審査が終了し、即日融資を受けられるローン商品です。一方で、不動産担保ローンは審査の過程で与信と不動産の審査が必要なため、スピードを重視する金融機関であったとしても、審査には数日、実際に融資が実行されるまでには1週間程度の期間が必要です。
無担保のキャッシングやカードローンは、借り入れる人が負担する費用は利息のみで、別途手数料などはありません。一方で、不動産担保ローンは「事務手数料」、「不動産調査費用」、「印紙代」、「登記費用」などの費用がかかります。
これらの費用は、「融資金額の○○%」のように定められていることが一般的で、借入金額が300万円の場合でも、10万円以上かかることもあります。そのため、低金利の借り入れができても、結果的にカードローンよりも支払総額が大きくなることも考えられます。
金融機関は融資時に担保不動産に抵当権の設定登記をします。抵当権は、債務者が返済出来なくなったときに、不動産を売却することで融資金を回収するために設定されます。
返済ができなくなると直ちに競売手続きが行われるとは限りませんが、延滞が続き、債権が正常化しないと金融機関が判断すれば、競売手続きに移行します。競売はさまざまなデメリットがあるため、返済が確実にできるかどうかあらかじめ考えておく必要があります。
不動産担保ローンを借り入れる流れは、以下のような流れで進めます。
まずは、金融機関のホームページなどから仮審査を申し込み、審査結果をもとに営業担当者と面談を行います。面談の結果、不動産担保ローンを利用することに決めたら、本申込み手続きに進みます。なお、面談したからといって、必ずしも本申込みをする必要はありません。
本申込みをすると、金融機関が担保不動産の調査を行います。調査の方法は担保不動産や金融機関によって異なり、実際に対象物件の内覧まで必要な場合もあります。審査の結果、担保不動産や与信に問題がないと判断されれば、契約手続きに進みます。
契約当日は、金銭消費貸借契約や抵当権設定登記の手続きを行い、融資実行日に資金が振り込まれます。なお、借り入れにかかる手数料は、融資金から清算されるので、手数料分のお金を別途用意する必要はありません。
これら一連の手続きは、金融機関の店舗で行うのが一般的ですが、店舗に行くのが難しい場合は、担当者が自宅や事務所まで来てくれることもあるので、相談してみるといいでしょう。
不動産担保ローンを利用する際には、以下のような書類が必要となります。
本申込みの際には、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類、契約の際には、印鑑証明書や実印などが必要です。審査の過程で、与信を判断するために、納税証明書や固定資産税納付書、収入証明書などを用意します。
また、担保不動産の状況を確認するために、不動産登記簿謄本や借入残高証明書も必要です。不動産担保ローンの必要書類は金融機関や担保となる不動産によって異なるため、担当者に確認して必要書類を用意しましょう。
不動産担保ローンの審査は、融資をする相手の「信用力」と、担保となる「不動産」から総合的に判断されます。信用力の審査では、個人の場合は収入、法人の場合は利益をはじめとして、過去の返済状況や申込人の年齢、ほかの金融機関からの借入状況などを確認します。
不動産の審査では、担保不動産が対象物件として問題ないかを確認の上、担保評価額を算出します。基本的には、不動産の価値が高ければ高いほど審査に通りやすく、大きな金額を借り入れられます。
不動産担保ローンの代表的な活用事例を紹介します。
不動産担保ローンは、銀行等からの借り入れの借換資金に活用できます。不動産担保ローンは、まとまった金額を長期間借り入れることができるため、金利が引き下がり、借入期間を延ばすことで、月々の返済額を抑えながら資金調達ができます。
ただし、長期間の借り入れになればなるほど、総返済額は増加するため、借入前に返済シミュレーションを必ず行いましょう。
赤字決算の法人が資金調達をしようとしても、無担保の事業資金融資等は、借り入れが難しいかもしれません。しかし、不動産担保ローンは、信用力だけでなく担保不動産の価値を加味して審査を行うため、融資を受けられる可能性があります。
また、赤字決算の法人だけでなく、開業したばかりで実績がない法人でも、融資を受けられる可能性もあります。
相続時には、相続税をはじめとして、代償分割や遺留分減殺請求によって多額の支払いが発生する場合があります。相続財産に不動産があれば、その不動産を担保にすることで、融資を受けられる可能性があります。
不動産担保ローンは、金融機関によって基準が異なりますが、以下のような質問が代表的です。
担保不動産に第二順位の抵当権を設定することで、融資を受けられる可能性があります。ただし、住宅ローンが多く残っている場合は、担保余力がないとみなされ融資を受けられません。
不動産の所有者が親族、法人の場合は会社の役員等の特定の条件で融資を受けられる可能性があります。ただし、不動産の所有者は、融資の物上保証人や連帯保証人になることを求められます。
所有者全員の同意があれば、融資を受けられる可能性があります。ただし、不動産を共有する人全員が連帯保証人になることを求められます。
信用情報に問題があっても、融資を受けられる可能性はあります。債務者へ融資をするかしないかは金融機関によって異なり、特定の金融機関で融資を断られたとしても、必ずしも審査に落ちるということはありません。
融資限度額は金融機関によって異なり、1億円以上の金融機関も珍しくありません。ただし、不動産担保ローンの融資限度額は、個人の信用力や担保不動産の価値に左右されるので、実際に金融機関に問い合わせてみないと正確な金額はわかりません。
不動産担保ローンには、一般的な無担保ローンと比較して大きな資金を、低金利かつ長期間にわたって借り入れることができます。一方で、融資までには時間と費用がかかるほか、万が一返済不能となったときには不動産を失う恐れがあります。こうしたメリットとデメリットを踏まえて、不動産担保ローンの利用を検討しましょう。
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