有料老人ホームとは?費用やサービスをわかりやすく解説

公開日:2023.10.04

有料老人ホームは、さまざまな種類や提供サービスの違いから、詳しくはわからないという人も多いでしょう。また、高齢者向けの住宅は、有料老人ホーム以外にも複数の形態があるので、検討の際には詳しく理解しておく必要があります。

この記事では、有料老人ホームの入居条件や費用、利用状況などを詳しく解説します。

有料老人ホームとは

「有料老人ホーム」とは、老人福祉法第29条第1項の規定に基づき、高齢者の心身の健康保持及び生活の安定のために設置される施設です。老人を入居させたうえで以下のいずれかのサービス(複数可)を提供している施設を、有料老人ホームと呼びます。

  1. 食事の提供
  2. 介護(入浴・排泄・食事)の提供
  3. 洗濯・掃除等の家事の供与
  4. 健康管理

なお、根拠法である老人福祉法では、「老人」という言葉に、年齢等の具体的な条件は定義されていません。

有料老人ホームの類型

有料老人ホームは、「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3つの類型に分けられます。

介護付有料老人ホーム

介護付有料老人ホームは、介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。介護等が必要となっても、施設が提供する介護サービスである「特定施設入居者生活介護」を利用しながら、施設での生活を継続することが可能です。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。介護が必要となった場合、入居者自身の選択により、地域の訪問介護等の介護サービスを利用しながら、施設の生活を継続することが可能です。

健康型有料老人ホーム

健康型有料老人ホームは、食事等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。介護が必要となった場合には、契約を解除し退去しなければなりません。

有料老人ホームの費用

有料老人ホームの費用について、根拠法である老人福祉法の第29条で以下のとおり定められています。

有料老人ホームの設置者は、家賃、敷金及び介護等その他の日常生活上必要な便宜の供与の対価として受領する費用を除くほか、権利金その他の金品を受領してはならない。

出典)老人福祉法(e-Gov法令検索)

この定義からわかるように、有料老人ホームでは、施設の利用上必要となる範囲の費用しか、基本的にはかかりません。厚生労働省の「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」によると、利用料が以下のとおり定められています。

家賃

家賃は、施設の整備に要した費用、修繕費、管理事務費、地代に相当する額等を基礎として合理的に算定され、近傍同種の住宅の家賃から算定される額を大幅に上回らないこと
(厚生労働省の令和3年度調査*によると、介護付は月84,790円、住宅型は月40,926円)

敷金

敷金を受領する場合には、その額は6か月分を超えないこととし、退去時に居室の原状回復費用を除き全額返還すること
(厚生労働省の令和3年度調査*によると、介護付は月94,710円、住宅型は月45,367円)

サービス費用

サービス費用は、入居者に対するサービスに必要な費用の額(食費、介護費用その他の運営費等)を基礎とする適切な額とすること
(厚生労働省の令和3年度調査*によると、介護付は月122,457円、住宅型は月72,480円)

令和3年度「高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究事業」報告書を参考としています。健康型のデータがないのは、健康型は施設数が他2類型と比較してかなり少ないため、十分な調査ができなかったものと推測されます。

有料老人ホーム入居時の前払い金

上述の主な費用に加えて、入居時に終身にわたって受領すべき家賃又はサービス費用の全部又は一部を前払金として一括して受領する、前払い方式を採用している施設もあります。前払金がない施設もあれば、1,000万円を超える施設もあります。前払金は老人福祉法の第29条で以下のとおり定められています。

有料老人ホームの設置者のうち、終身にわたって受領すべき家賃その他厚生労働省令で定めるものの全部又は一部を前払金として一括して受領するものは、当該前払金の算定の基礎を書面で明示し、かつ、当該前払金について返還債務を負うこととなる場合に備えて厚生労働省令で定めるところにより必要な保全措置を講じなければならない。

出典)老人福祉法(e-Gov法令検索)

また、厚生労働省の「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」によると、基本的な前払金の算定方法を以下のとおり記載されています。

①期間の定めがある契約の場合
(1ヶ月分の家賃又はサービス費用)×(契約期間(月数))

②終身にわたる契約の場合
(1ヶ月分の家賃又はサービス費用)×(想定居住期間※(月数))+(想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額)

※想定居住期間は、入居者の終身にわたる居住が平均的な余命等を勘案して想定される期間と、同指導指針内で定義されています。

有料老人ホームの費用を抑える方法

有料老人ホームに入居する場合、以下の制度を利用することで、入居中の費用を抑えられる可能性があります。

高額介護サービス費制度

月々の利用者負担額(福祉用具購入費や食費・居住費等一部を除く。)の合計額が所得に応じて区分された上限額を超えた場合、その超えた分が介護保険から支給される制度です。詳細な上限額(月額)は以下のとおりです。

・高額介護サービス費制度の負担の上限額(月額)
高額介護サービス費制度の負担の上限額(月額)

※厚生労働省ホームページを基に編集者作成

支給対象者には、各自治体から高額介護サービス費支給申請書が送られてきます。受け取ったらしっかりと申請手続きを行いましょう。

高額医療、高額介護合算制度

同じ医療保険の世帯内で、医療保険と介護保険両方に自己負担が生じた場合は、合算後の負担額が軽減されます。決められた上限額(年額)を500円以上超えた場合、医療保険者に申請をすると超えた分が支給されます。詳細な上限額(年額)は以下のとおりです。

・高額医療、高額介護合算制度の負担の上限額(年額)
・高額医療・高額介護合算制度の負担の上限額(年額)

※厚生労働省ホームページを基に編集者作成

合算期間は8月1日から翌年の7月31日までの1年間で、各自治体の窓口に申請することで利用することができます。

その他の老健施設との違い

一般的に老人ホームと呼ばれるものの中には、有料老人ホーム以外の施設も存在します。どのような施設があるのかを紹介します。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅は、「状況把握サービス、生活相談サービス等の福祉サービスを提供する住宅」です。有料老人ホームとは異なり、1日のスケジュールが決められているわけではないため、食事や入浴の時間などは自分のペースで決められます。

見守りサービスや生活相談といったサービスが付いているので、一人暮らしに不安を感じられている方にとって、適度なサポートを受けながら自由な暮らしができます。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホームは、介護老人福祉施設とも呼ばれており、要介護状態の高齢者が入居できる公的施設であるのが特徴です。公的施設という性質上、民間の有料老人ホームと比べると安い費用で入所できます。

ただし、人気があるので申請から入所まで、時間がかかってしまう点に注意しておきましょう。

まとめ

有料老人ホームには3つの類型があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。生活状況や介護の有無、将来的な費用負担なども考慮し、利用する施設を検討することが大切です。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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