更新日: / 公開日:2022.11.23
不動産の売買や相続、住所変更などがあった場合は、不動産登記の手続きが必要です。しかし、「不動産登記」という言葉を聞いたことはあっても、詳細までは理解していないかもしれません。不動産登記の手続きは、自宅購入や相続の際に必ず必要になるので、基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。
この記事では、不動産登記の概要や手続きの流れ、必要書類、費用について詳しく解説します。
登記(登記制度)とは、一定の事項を公開された公簿に記載することによって、第三者に対してもその権利の内容を明らかにし、取引の安全と円滑化を図ろうとするものです。この記事で解説する「不動産登記」以外にも、「商業登記」や「相続登記」など、様々な種類があります。
不動産登記とは、土地や建物などの不動産の一つ一つについて、「どこに」「どれくらいの広さで」「誰が持っているのか」といった情報をコンピュータに記録することをいいます。この作業は、法務局の職員である登記官によって、専門的な見地から正しいのかを判断された上で行われます。
不動産登記は不動産登記法に基づいて、以下のような事項が記録され、法務局に保管されています。
つまり、不動産登記を確認すれば、不動産の所在地や所有者、どのような権利を誰が所有しているかなどの情報がわかります。
不動産登記の大きな役割が、第三者に不動産の所有権を法的に主張できるということです。民法第177条では、不動産の権利について次のように定めています。
つまり、登記がなければ不動産の所有者と法的には認められません。たとえば、不動産を相続した際、登記をせずに所有権が故人のまま、所有者が変更されていないと、相続人は売却ができません。
出典)法務局「不動産登記」
不動産登記の情報は、「登記簿謄本(登記事項証明書)」に記載されています。登記簿謄本の記載事項は以下4つに区分されます。
表題部では不動産の所在地や面積、建物の種類・構造など、「どのような不動産であるのか」が記載されています。
権利部は甲区と乙区に分かれます。甲区では、「誰が不動産の所有者か」が記載されています。具体的には所有者の住所や氏名、取得日、取得経緯などが記載されています。
乙区では、抵当権や地上権といった所有権以外の権利について記載されています。例えば、住宅ローンを組む場合は、金融機関の名前や金額、金利などが記載されます。
抵当権が複数の不動産に設定されている場合、この共同担保目録にその旨が記載されています。住宅ローンを組む場合は、一般的には購入する不動産を担保として抵当権が設定されます。この時、基本的に建物と土地の両方に抵当権が設定されるので、それぞれの共同担保目録に記載されます。
不動産登記の手続きが必要になる主な場面は以下のとおりです。
マイホームなどの不動産を購入したときは、新築なら「建物表題登記」や「所有権保存登記」、中古の場合は所有権が売主から買主に移ったことを証明する「所有権移転登記」を行います。
不動産を相続したときは「相続登記」、結婚や転居などで所有者の氏名や住所が変わったときは「住所等変更登記」が求められます。この2つの登記は義務化されるので注意が必要です。
住宅ローン完済時は「抵当権抹消登記」を行います。なお、住宅ローン完済時は火災保険の質権設定の解除等、ほかにもしなければいけない手続きがあります。詳しくは以下の記事で解説しています。
建物を取り壊したときは「建物滅失登記」が必要です。建物を解体してから1か月以内に行わなければならないため注意しましょう。
不動産登記手続きは、基本的に以下の流れで行います。なお、自分で手続きを行うのが難しい場合は、司法書士に代行を依頼することも可能です。
不動産登記を申請をするには、必要な事項を記載した申請書とその添付書類の準備が必要です。登記申請書は法務局のホームページから取得できます。添付書類については登記原因によって異なるので注意が必要です。
法務局によって管轄区域が定められているため、どこの法務局に書類を提出するのか確認が必要です。管轄区域はこちら(法務局のホームページに遷移します)から確認できます。
必要書類が受理されたら、法務局で内容の審査が行われます。問題なく手続きが完了したら、登記識別情報と登録完了証が作成されます。登記申請書に用いた印鑑を持って法務局に行くと、登記識別情報と登録完了証を受領できます。
出典)法務局「○登記の申請はどのような方法でしなければならないのですか?」
不動産登記にかかる主な費用は以下のとおりです。
登記にあたり、登記簿謄本や住民票の写し、印鑑証明書、固定資産税評価証明書などを取得する場合は、1通につき数百円の手数料がかかります。
登録免許税額は、登記の種類や、不動産の種別によって異なります。売買の場合、土地、建物は評価額の2%(土地は2026年3月31日までは0.15%)です。建物が住宅用家屋に該当する場合は、0.3%になります。住宅用家屋を購入する場合は、他にも減税制度が適用されます。詳しくは以下の記事で解説しています。
司法書士に依頼する場合は、上記費用以外に報酬や交通費などが請求されます。報酬は司法書士によって異なるため、ホームページなどで金額を確認した上で依頼するといいでしょう。
実状に合った不動産登記がされていない場合には、主に次のようなデメリットがあります。
金融機関から不動産を担保とする融資を受ける際に、登記がされていないと融資を受けられないため、売買が難しくなります。例えば、未登記の中古物件を売買する際は、売主・買主の双方に次のような不利益が生じることがあります。
売主側は売却前に土地家屋調査士や司法書士に依頼し、建物や土地の計測や登記申請を行うため費用と手続きに負担が生じます。あらかじめ登記していれば売却時の手間も少なくなるでしょう。
買主側は、不動産を現金で一括購入できる場合は資金面では問題ないかもしれませんが、ほとんどの場合が住宅ローンを組んで購入することになるため、円滑な売買ができなくなる恐れがあります。
また、何世代にもわたって未登記の場合は建物の図面や建築確認済証などが紛失している可能性もあり、より手続きに手間がかかるかもしれません。相続登記を行わず放置している間に、新たな相続が発生すると、さらに相続人が増えて権利関係がより複雑化し、次世代への負担を先送りすることになります。
出典)東京法務局「「長期間にわたり相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」について」
このような問題を解決するため、令和6年4月1日より相続登記は義務化されました。詳細は以下の記事で詳しく解説しています。
第三者に対して不動産の所有権を法的に主張するには、不動産登記が必要です。登記手続きを怠ると不動産取引をスムーズに進められず、トラブルの原因となります。不動産登記が必要な事由が生じた場合は、忘れずに手続きを行いましょう。
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