公開日:2023.09.20
近年の土地価格の上昇に伴い、大きな土地のままでは不動産を購入できない人が増加しています。そのような背景から、大きな土地を分割(分筆)することで価格を抑えた、小規模住宅が増えています。しかし、敷地面積の制限を設ける自治体が増えつつあることをご存知でしょうか。
この制限が設けられると、小規模住宅の敷地面積によっては、将来の建て替えや売却が難しくなるかもしれません。小規模住宅の購入を検討している場合は、敷地面積の制限について理解を深めておくことが大切です。この記事では、敷地面積の制限の概要や最低敷地面積を調べる方法を紹介します。
敷地面積の制限とは、建築物の敷地面積を一定以上としなければならない規制のことです。この時、基準となる敷地面積は、「敷地面積の最低限度」「最低敷地面積」と呼ばれます。
建築基準法や都市計画法では、敷地面積の制限について以下のように定めています。
この規制は、1つの広い敷地を複数に分割する「ミニ開発」を防止し、良好な住環境を維持・保存することを目的としています。小規模な敷地に住宅が密集すると、日照や通風などの環境が悪化し、火災リスクが高まるからです。
最低敷地面積は都市計画に基づき設定されるため、自治体ごとに異なります。例えば、福岡市の条例では、「市街化区域165㎡」「市街化調整区域200㎡」を敷地面積の最低限度と定めています。
なお、建築基準法(第五十三条の二第2項)では、都市計画で定める敷地面積の最低限度を「200㎡以下」としています。
近年、都心では土地価格の上昇を背景に、敷地面積が50㎡程度の小規模住宅が増加しています。土地を分割し、1棟あたりの敷地面積を50㎡程度とすることで、住宅の販売価格を抑えられるからです。
都心の小規模住宅は車庫や庭などの敷地を確保することは困難です。しかし、通勤に便利であることから、都心に住みたいファミリー層を中心に一定の需要があると考えられます。
一方で、都心では土地の分割を制限する動きも広がっています。小規模住宅が増えすぎると、住環境の悪化や火災リスクが懸念されるからです。
例えば、荒川区では2021年11月に新たな規制が導入されました。新たに土地を分割して建築物を建てる場合、1棟あたりの敷地面積を60㎡(約18坪)以上とする必要があります。ただし、現状既に60㎡に満たない土地に、建物の新築や建て替え、土地の売買を行うことは可能です。
・敷地分割の例
なお、東京23区では荒川区以外でも、同様の規制を既に設けている区がいくつかあります。
建築基準法第53条の2第1項によると、以下の敷地については、敷地面積の制限は適用されません。
購入予定物件の最低敷地面積を調べる場合は、インターネットで「〇〇(地域名) 敷地面積の制限(もしくは敷地面積の最低限度)」と検索するといいでしょう。もしくは、自治体の窓口に問い合わせて確認することも可能です。
また、物件の登記簿謄本を見ると、敷地の分筆が行われているかを把握できます。もし土地の分割に関する規制導入後、最低敷地面積を下回る広さに分筆していることが分かったら、再建築や売却が可能かを自治体や不動産会社に確認しておくことが大切です。
所有している土地を最低敷地面積未満に分筆してしまうと、売却が難しくなります。最低敷地面積に満たない土地を売却する場合は、以下3つの方法を検討しましょう。
相場より価格が下がる恐れはありますが、売却できる可能性は高まります。一方で、現実的には難しい方法であるため、専門家に相談するようにしましょう。
人口が増加している都心部では大きな土地を分割し、小規模住宅として売り出されるケースが増加しています。しかし、今後は土地の分割について規制が拡大されることも考えられます。都心で小規模住宅の購入を検討している場合は、敷地面積の制限に関する自治体の動向を確認しておきましょう。
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