セーフティネット住宅とは?入居条件や費用をわかりやすく解説

公開日:2024.01.10

賃貸住宅は持ち家に比べて気軽に引っ越しもでき、自由度が高いのが魅力です。しかし、働いていない高齢者などは入居を断られることがあります。そこで、賃貸住宅に安心して入居するために、「セーフティネット住宅」を利用するのも選択肢です。

この記事では、セーフティネット住宅の概要や入居条件、費用について詳しく解説します。

セーフティネット住宅とは

セーフティネット住宅とは、住宅セーフティネット制度に登録されている、住宅確保要配慮者(詳細は後ほど説明)の入居を拒まない賃貸住宅です。

高齢者や障がい者など、住宅の確保に配慮が必要な人は今後も増加が見込まれています。しかし、住宅セーフティネットの根幹である公営住宅は、財政的な負担が大きいことから増加が見込めない状況です。

そこで、2017年10月に、増加している民間の空き家を活用した住宅セーフティネット制度が始まりました。住宅セーフティネット制度は、以下3つの柱で成り立っています。

  1. 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度
  2. 登録住宅の改修や入居者への経済的な支援
  3. 住宅確保要配慮者に対する居住支援

【参考】住宅セーフティネットの仕組み
住宅セーフティネットの仕組み

出典)国土交通省「住宅セーフティネット制度について」

住宅確保要配慮者とは

セーフティネット住宅は、住宅確保要配慮者が賃貸人に入居を申し込みできます。住宅確保要配慮者の範囲は以下のとおりです。

  • ①低額所得者(月収15.8万円(収入分位25%)以下)
  • ②被災者(発災後3年以内)
  • ③高齢者
  • ④障がい者
  • ⑤子ども(高校生相当まで)を養育している者
  • ⑥住宅の確保に特に配慮を要するものとして国土交通省令で定める者
  • 上記⑥は、外国人や東日本大震災等の大規模災害の被災者(発災後3年以上経過)などが含まれます。

    住宅確保要配慮者の厳しい現状

    国土交通省の資料によると、賃貸人は住宅確保要配慮者の入居に対して以下のようなネガティブな意識を持っています。

    〇住宅確保要配慮者の入居に対する賃貸人(大家等)の意識
    住宅確保要配慮者の入居に対する賃貸人(大家等)の意識

    出典)国土交通省「住宅セーフティネット制度の現状について」(P.3)

    賃貸人の約7割は高齢者や障がい者の入居、賃貸人の約6割は外国人の入居に対して拒否感を抱いています。また、賃貸人が入居を制限する理由は以下のとおりです。

    〇賃貸人(大家等)の入居制限の理由
    賃貸人(大家等)の入居制限の理由

    出典)国土交通省「住宅セーフティネット制度の現状について」(P.3)

    賃貸人は、他の入居者や近隣住民との協調性、家賃の支払い、居室内での死亡事故等に対して不安を強く感じているようです。これらの結果から、住宅確保要配慮者が一般的な賃貸住宅を利用するのは困難であり、住宅セーフティネット制度が必要とされていることが分かります。

    セーフティネット住宅の登録基準

    賃貸人は、セーフティネット住宅として都道府県、政令市、中核市に賃貸住宅を登録できます。主な登録基準は以下のとおりです。

  • ①耐震性を有すること
  • ②住戸の床面積が原則25㎡以上であること
  • ③家賃の額が近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないこと
  • 共同居住型住宅(シェアハウス)については、住宅全体の面積や専用居室、共用部分について別途基準が定められています。

    入居を受け入れる住宅確保要配慮者の範囲

    セーフティネット住宅では、住宅確保要配慮者の受け入れが必要です。ただし、すべての住宅確保要配慮者を受け入れる必要はなく、範囲を限定して登録できます。例えば、「高齢者の入居は拒まない」「高齢者、低額所得者の入居は拒まない」といった具合です。マンションなどの集合住宅については、住戸単位での登録が可能です。

    セーフティネット住宅の費用

    国土交通省の資料によると、セーフティネット住宅の家賃の状況は以下のようになっています。

    〇セーフティネット住宅の家賃の状況
    家賃の状況

    出典)国土交通省「住宅セーフティネット制度の現状について」(P.7)

    全国では家賃5~8万円、東京都では家賃6~10万円の住宅が全体の70%以上を占めています。なお、一般的な賃貸住宅に住むときと同様に、敷金や礼金が必要な場合もあります。

    セーフティネット住宅の現状

    2022年12月末現在、登録住宅のほとんどが共同住宅です。戸建て住宅は0.1%しかありません。戸建て住宅への入居を希望する場合、セーフティネット住宅の物件を見つけるのは難しいでしょう。また、登録住宅の空室率は2.3%となっており、既にほとんど埋まっている状態です。

    住宅確保要配慮者の対象を見る限り、セーフティネット住宅の需要は高まると考えられます。現在は需給バランスが取れておらず、このままでは今後増加が見込まれる単身世帯の需要に対応できない恐れがあります。

    空き家問題の解決に繋がるか

    住宅セーフティネット制度は、住宅確保要配慮者への住居提供だけでなく、空き家問題の解決策としても期待されています。

    セーフティネット住宅の提供は、公営のみでは限界があるので、民間の協力が不可欠です。そこで、空き家となっている住宅をセーフティネット住宅として提供することが推奨されています。

    セーフティネット住宅は需要増加が見込まれているため、空き家の登録が増えれば、「要配慮者の住宅確保」と「空き家の解消」という2つの課題を同時に解決できる可能性があるといえます。

    まとめ

    セーフティネット住宅であれば、高齢者や障がい者、子育て世帯など、住宅の確保に配慮が必要な人でも安心して入居できます。入居可能な物件は「セーフティネット住宅情報提供システム」で検索可能です。

    一般的な賃貸住宅への入居が難しい場合は、セーフティネット住宅を検討してみてはいかがでしょうか。

    執筆者紹介

    「住まいとお金の知恵袋」編集部
    金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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