更新日: / 公開日:2021.10.20
融資や自治体のサービス、車検などを申し込むとき、納税証明書を求められることがあります。そもそも、納税証明書とはどのような書類なのでしょうか。日常生活で納税証明書が必要になる場面は多くないので、種類や取得方法がよくわからない人もいるでしょう。
この記事では、納税証明書の概要や種類ごとの記載事項、取得方法などについて詳しく解説します。
納税証明書とは、納付すべき税額や納付した税額、所得金額などを証明する書類です。住宅ローンの審査を受けたり、自治体のサービスを利用したりする際に、提出を求められることがあります。
しかし、一言に納税証明書と言っても、証明する税金の種類(税目)によって記載事項や交付請求先が異なるので注意が必要です。納税証明書ごとの記載事項や取得方法の詳細は後述します。
納税証明書と類似する書類として「課税証明書」や「所得証明書」があります。課税証明書は対象税目の課税額を証明する書類で、所得証明書は1年間(1月1日~12月31日)の所得金額を証明する書類です。
一方で、納税証明書は、対象税目の課税額の納付状況を証明する書類です。納税証明書が求められる場面では、税金の納付漏れがないかを確認されます。そのため、納税証明書を求められた際に、課税証明書や所得証明書を提出しても要件を満たさないので注意しましょう。
納税証明書は、課税主体に応じて「国税」「県税(都税)」「市税」の3種類に分けられます。その名のとおり、国税は国、県税(都税)は都道府県、市税は市区町村が課税・徴収する税金です。国税に対して、県税(都税)と市税を合わせて「地方税」といいます。主な対象税目は、それぞれ以下のとおりです。
納税証明書を取得する際は、対象税目を管轄する窓口に申請する必要があります。国税は現在の住所地を所轄する税務署、県税は県税事務所(都税は都税事務所)、市税は市区町村役場が窓口です。
ただし、東京23区内では市町村税も都税として課税されているため、市区町村役場ではなく、一律で都税事務所で取得する点には注意が必要です。
最近では、国税はオンラインでの交付請求にも対応しています。地方税は、マイナンバーカードを利用したコンビニ交付サービスに対応している自治体もあります。詳しくは、居住地の自治体のホームページを確認しましょう。
出典)
・財務省「税金には、どういった種類のものがありますか」
・東京都主税局
ここでは、国税の納税証明書の記載事項と取得方法を解説します。
国税の納税証明書は、税目や証明内容によって「その1」「その2」といった名称で分類がされます。国税の納税証明書の種類と主な記載事項は下表のとおりです。
国税の納税証明書の種類と主な記載事項
納税証明書の種類 | 証明内容 |
---|---|
その1 | 納付すべき税額、納付した税額及び未納税額等 |
その2 | 所得金額(所得税、復興特別所得税、法人税) |
その3 | 未納税額がないこと |
その3の2 | 所得税、復興特別所得税、消費税・地方消費税(個人用) |
その3の3 | 法人税、消費税・地方消費税(法人用) |
その4 | 証明期間に滞納処分を受けたことがないこと |
国税は、税目や証明内容によって納税証明書の種類が変わります。そのため、国税の納税証明書が必要な場合は、証明内容に応じた納税証明書の種類を選ぶ必要があります。
金融機関や地方自治体から国税の納税証明書を求められた場合、取得書類を間違えてしまうと再取得が必要となるため、取得の前に必ず確認しておきましょう。
国税の納税証明書は、オンラインで請求する方法と、書面(納税証明書交付請求書)で請求する方法の2つがあります。どちらの場合でも、現在の住所地を所轄する税務署が請求先です。
交付請求の際は、手数料が必要です。請求方法、納税証明書の種類によって金額が異なるので注意しましょう。必要な金額は下表のとおりです。
証明書の種類 | オンラインで請求 | 書面で請求 |
---|---|---|
その1・その2 | 税目数×年度数×枚数×370円 | 税目数×年度数×枚数×400円 |
その3・その4 | 枚数×370円 | 枚数×400円 |
上記の金額を、オンラインで請求する場合は電子納付、窓口や郵送など、書面で請求する場合は収入印紙で納付します。証明書を窓口で直接受け取る場合は現金での納付も可能です。
また、交付請求の際は本人確認書類も必要となります。個人の場合は個人番号確認書類も必要となるので忘れず用意しましょう。
出典)
・国税庁「平成28年1月から、納税証明書交付請求時の本人確認書類が変わります」
・国税庁「納税証明書を請求される方へ」
ここでは、都税・県税の納税証明書の記載事項と取得方法を解説します。
東京都が課税・徴収している各税目について、納付すべき税額や納付した税額、未納額などが証明されます。主な記載項目は以下のとおりです。
一例として、都税について説明していますが、その他の道府県が発行する納税証明書も記載事項に大きな違いはありません。
都税の納税証明書は、当年度分を含めて6年度分を発行でき、証明書に納付日の記載はありません。また、「未納税額がないことの証明」や「完納証明」という名目の証明書は東京都主税局では発行していないため、納税証明書で代用する必要があります。
なお、都で発行している「滞納処分を受けたことがないことの証明」は、「未納がないことの証明」にはならないので注意しましょう。このように、自治体により書類の扱いが異なる場合もあるので、納税証明書を求められた場合には詳細を確認するようにしましょう。
自動車税は、都道府県が課税・徴収する税金です。納税証明書には、自動車登録番号や車体番号などが記載されています。車検を受ける際は、運輸支局・自動車検査登録事務所にて納税確認を電子的に行えるようになったため、平成27年4月から、車検時の自動車税納税証明書の提示が省略可能になりました。
一方で、自動車税の納付間もない場合など、納付してからすぐに車検を受けるときなどには、紙の納税証明書が必要な場合があります。自動車税の納税通知書は、金融機関やコンビニで納付して領収日付印が押されると「納税証明書」として利用できます。
出典)
・東京都主税局「よくあるお問合せ」
・千葉県「車検のとき、納税証明書がいらなくなったと聞きましたが。」
都税や県税の納税証明書も、オンラインで請求する方法と、書面(納税証明書交付請求書)で請求する方法の2つがあります。どちらの場合でも、現在の住所地を所轄する都道府県税事務所が請求先です。
交付請求の際は、手数料が必要です。国税の納税証明書とは異なり、請求方法等によらず一律で1税目につき400円です。また、国税の納税証明書とは異なり、収入印紙での支払いができない点にも注意しましょう。例えば、郵送で申請する場合は収入印紙ではなく定額小為替を用意する必要があります。
出典)
・東京都主税局「各証明の申請について」
・東京都主税局「都税に関する証明等申請時の「本人確認」方法について」
ここでは、市税の納税証明書の記載事項と取得方法について解説します。
市区町村が課税・徴収する税金について、納付すべき金額や納付した税額が証明されます。たとえば、横浜市の納税証明書には以下の事項が記載されています。
※申出がない場合は記載なし
他の市区町村が発行する納税証明書についても、記載内容に大きな違いはありません。市税の納税証明書は、市区町村役場の担当窓口に申請すれば取得できます。証明内容によっては申出が必要だったり、別の書類が必要になったりする場合もあります。証明が必要な内容を窓口で伝えた上で、申請することが大切です。
出典)横浜市「納税証明書」
市税の納税証明書は、市区町村役場が請求先です。ただし、東京23区内であれば都税事務所が請求先になります。たとえば、さいたま市の場合、窓口に行かない方法として納税証明書の種類によって異なるものの、コンビニ、電子申請、郵送申請があります。
市税の証明書も手数料が必要ですが、市区町村によって異なります。そのため、市区町村のホームページなど確認しておく必要があります。あくまで目安ですが、1税目につきおおよそ300~400円です。その他マイナンバーカードでの取得だと200円になる場合もあります。
納税証明書は、証明内容や税目によって証明書の種類や取得方法が異なります。必要なときに問題なく手続きができるように、納税証明書の内容や申請窓口を理解しておきましょう。
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