住宅ローンのペアローンと収入合算の違いとは?

公開日:2025.01.22

夫婦や親子が一緒に住宅ローンを組む方法として、「ペアローン」と「収入合算」があります。どちらも2人の収入で住宅ローンを組めるため、単独で契約するよりも借入可能額を増やすことが可能です。しかし、ペアローンと収入合算は仕組みが異なるため、どちらが向いているかを見極めることが大切です。

この記事では、住宅ローンのペアローンと収入合算の違い、選び方をわかりやすく解説します。

ペアローンとは

ペアローンとは、1つの物件に対して、夫婦(または親子)がそれぞれ主たる債務者となって住宅ローンを組む方法です。

夫婦の場合、それぞれが債務者となって計2本の住宅ローンを組み、お互いが相手のローンの連帯保証人となります。物件は夫婦の共有名義となり、持分はそれぞれの借入金額に応じて決まるのが一般的です。

契約は2本ですが、同じ金融機関でローンを組む必要があります。また、原則として購入物件での同居が条件となります。

収入合算とは

収入合算とは、申込者本人(主たる債務者)の収入に、配偶者や親子の収入を合算して住宅ローンを組む方法です。

申込者が単独で住宅ローンを組むよりも借入可能額を増やすことが可能です。収入合算は「連帯保証型」と「連帯債務型」の2種類があり、どちらを取り扱っているかは金融機関によって異なります。

連帯保証型は、収入を合算する人が連帯保証人になるのが特徴です。主たる債務者が住宅ローンを返済できなくなった場合は、連帯保証人が代わりに返済義務を負います。

連帯債務型は、収入を合算する人が連帯債務者となります。連帯債務者は、最初から主たる債務者と同等の返済義務を負います。

ペアローンと収入合算の主な違い

ペアローンと収入合算の違いは主に次の3つです。

  • ローン契約の形態(契約が2本か1本か)
  • 団体信用生命保険(団信)の取り扱い
  • 住宅ローン控除の適用条件

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ローン契約の形態(契約が2本か1本か)

住宅ローンの契約数はペアローンが2本、収入合算が1本です。

住宅ローンを組む際は、事務手数料や保証料、印紙税、登記費用などの諸費用がかかります。ペアローンは2本分の諸費用が生じるため、1本のみの収入合算に比べると費用負担が増えることになります。

団体信用生命保険(団信)の取り扱い

夫婦でペアローンを組む場合、夫と妻はそれぞれ団体信用生命保険(以後、団信)に加入します。どちらかに万が一のことがあった場合、団信で住宅ローンが完済されるのは1人分のみです。残された人は、引き続き住宅ローンを返済する必要があります。

収入合算(連帯保証型)は、団信に加入している主たる債務者が亡くなった場合、住宅ローンは保険金で完済されます。ただし、収入合算者(主たる債務者ではない者)は団信に加入できないのが一般的です。収入合算者に万が一のことがあっても団信の保障は受けられず、主たる債務者は引き続き返済義務を負うことになります。

なお、収入合算(連帯債務型)は、「連生団信」を提供している金融機関もあります。連生団信とは、収入合算者に万が一のことがあった場合も保険金で住宅ローンが完済される団信です。取り扱いの有無は金融機関によって異なるので、詳細は各金融機関に確認しましょう。

住宅ローン控除の適用条件

ペアローンは、夫婦(または親子)がそれぞれ住宅ローン控除を受けられます。

一方、収入合算は連帯保証型と連帯債務型で取り扱いが異なります。連帯保証型は、住宅ローン控除の対象となるのは主たる債務者のみで、収入合算者は控除を受けられません。連帯債務型は、主たる債務者・収入合算者ともに住宅ローン控除が適用されます。

ペアローンと収入合算の違いをまとめると以下のようになります。

ペアローン収入合算(連帯保証型)収入合算(連帯債務型)
住宅ローンの契約数2本(お互いに連帯保証人となる)1本(収入合算者は連帯保証人)1本(収入合算者は連帯債務者)
物件の所有権共有名義主たる債務者の名義共有名義
団体信用生命保険それぞれ加入主たる債務者のみ加入主たる債務者のみ加入
(連生団信へ加入できる場合あり)
住宅ローン控除それぞれ利用可能主たる債務者のみ利用可能それぞれ利用可能

ペアローンと収入合算の選び方

ペアローンと収入合算のどちらにするか迷った場合は、上記の主な違いに基づいて、メリットやリスクを比較検討することが大切です。

例えば、夫婦がどちらも安定した職業に就いており、収入に大きな差がない場合はペアローンが向いています。万が一のことがあっても、自身のローンは収入から返済できます。住宅ローン控除の恩恵も最大限に受けられるでしょう。

一方で、夫婦の収入に差がある場合は収入合算がよいかもしれません。パートナーを収入合算者とすることで、単独でローンを組むよりも借入可能額を増やすことが可能です。契約が1本のみのため、諸費用を抑えられるのもメリットです。

万が一のときのリスクや住宅ローン控除による経済的なメリット、諸費用などを考慮して、どちらが有利になるかを見極めましょう。

なお、ペアローン・収入合算はともに、どちらか一方が働けなくなった場合にローン返済が困難になる恐れがあります。一時的に世帯収入が減少する可能性も考慮して、無理のない返済計画を立てることが重要です。

まとめ

ペアローンと収入合算は、どちらも夫婦または親子2人の収入で住宅ローンを組めるため、単独で契約するよりも借入可能額を増やすことが可能です。ただし、諸費用や団信、住宅ローン控除などに違いがあるため、どちらが向いているかを見極めることが大切です。

ペアローンと収入合算のどちらを選ぶ場合でも、一時的な世帯年収の減少などを考慮に入れた上で、無理のない返済計画を立てましょう。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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