プロパー融資と保証付き融資とは?違いと特徴を解説

公開日:2024.11.20

銀行などの金融機関の融資は、「プロパー融資」と「保証付き融資」の2つに分けられます。自営業者が銀行から融資を受けようとする場合、どちらの方法を利用すればよいのでしょうか。金融機関に相談する前に、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。

この記事では、プロパー融資と保証付き融資の仕組みと違い、銀行融資が難しい場合の資金調達方法を紹介します。

プロパー融資とは

プロパー融資とは、銀行などの金融機関が信用保証協会(第三者機関)の保証を付けずに行う融資のことです。

保証を付けずに直接融資を行うため、債務者の貸し倒れリスクは金融機関が負うことになります。万が一、借主が返済できなくなった場合は、金融機関は大きな損害を被ることになるので、融資審査は厳しい傾向にあります。

プロパー融資は、基本的に信用度の高い事業者しか利用できません。その分、好条件で融資を受けられる可能性があります。

保証付き融資とは

保証付き融資とは、銀行などの金融機関が信用保証協会の保証を利用して行う融資のことです。万が一、借主が返済できなくなった場合は、信用保証協会が金融機関に立て替え払いを行います。

プロパー融資とは異なり、金融機関は債務者の貸し倒れリスクを負わずに済みます。そのため、「事業の実績がない」「金融機関との取引歴が浅い」自営業者が融資申し込みをすると、保証付き融資を勧められるのが一般的です。

保証付き融資を利用する際、借主は所定の信用保証料を支払う必要があります。

出典)一般社団法人 全国信用保証協会「初めての融資と信用保証」

プロパー融資と保証付き融資の利用割合

日本政策金融公庫の「第222回 信用保証利用企業動向調査」によると、2024年7-9月期における保証利用状況は以下のとおりです。

  • 保証を利用した企業の割合:54.6%
  • 保証利用がない企業の割合:45.4%

「保証利用がない=プロパー融資」とすると、該当期間中に借り入れを実施した企業のうち、概算で全体の45%がプロパー融資を利用しており、この割合は2024年4-6月期よりもやや増加しています。

出典)日本政策金融公庫「第222回 信用保証利用企業動向調査結果の概要P.4」

プロパー融資と保証付き融資の違い

プロパー融資と保証付き融資は、貸主である金融機関が債務者の貸し倒れリスクを負うかどうかが大きな違いです。

前述のとおり、プロパー融資は信用保証協会の保証を付けずに直接融資を行います。金融機関が債務者の貸し倒れリスクを負うため、融資審査は厳しい傾向にあります。「金融機関との取引歴が長い」「長期にわたって業績が安定している」など、金融機関からの信用度が高い事業者でなければ利用するのは難しいでしょう。

一方、保証付き融資は、万が一借主が返済できなくなっても信用保証協会が弁済してくれるため、金融機関としては融資がしやすくなります。このような特徴から、一般的にプロパー融資のほうが借りづらく、保証付き融資のほうが借りやすいといえます。

特に開業して間もない自営業者は金融機関との取引歴がなかったり、決算書で売上などの実績を示すことができなかったりするため、プロパー融資を受けるのは難しくなります。金融機関から融資を受けるなら、通常は保証付き融資となるでしょう。

保証付き融資も難しい場合は?

開業して間もない自営業者の場合、たとえ保証付き融資であっても断られてしまうかもしれません。「事業の実績がない」という理由で銀行から融資を受けるのが難しい場合、次のような方法であれば資金調達できる可能性があります。

政府系金融機関からの借り入れ

政府系金融機関の日本政策金融公庫では、新規開業資金の融資を行っています。新たに事業を始める人、または事業開始後概ね7年以内の人が対象です。適正な事業計画を策定し、その計画を遂行する能力が十分あると認められれば融資を受けられます。

新たに事業を始める人、または税務申告を2期終えていない人については、原則として無担保・無保証人で融資を受けられ、金利引き下げなどの優遇措置も用意されています。

ただし、融資審査があるため、審査結果によっては利用できないこともあります。まずは最寄りの日本政策金融公庫の支店に相談してみるといいでしょう。

出典)日本政策金融公庫「新規開業資金」

ビジネスローン

ビジネスローンとは、主にノンバンクが取り扱っている事業者向けのローンです。無担保・無保証で申し込みできるローンもあるため、実績がない事業者でも利用しやすいでしょう。ただし、比較的金利は高く、少額しか借りられない傾向にあります。

不動産担保ローン

不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保に借り入れができる商品です。自宅などの不動産を所有している場合、実績がなくても融資を受けられる可能性があります。

ノンバンクのビジネスローンに比べて、まとまったお金を低金利で借りられるのがメリットです。金融機関によっては、家族名義の不動産を担保に融資を受けることも可能です。

リースバック

リースバックとは、自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も自宅に住み続けられるサービスです。

リースバックは金融機関などのローン商品とは異なり、不動産取引となるため、与信面よりも「不動産の価値」「家賃の支払能力」などが重視されるため、売却できる自宅があれば、事業の実績がなくても資金調達ができます。引っ越しが不要で、住環境を変える必要がないのもメリットです。

ただし、自宅の売却価格は市場価格より安くなるのが一般的です。また、売却後は毎月家賃を支払う必要があります。

まとめ

プロパー融資は好条件で借り入れができますが、金融機関が債務者の貸し倒れリスクを負うため、基本的に信用度の高い事業者しか利用できません。自営業者の場合は、保証付き融資のほうが利用しやすいといえます。

開業して間もない自営業者で、銀行の保証付き融資を利用するのが難しい場合は、政府系金融機関や不動産担保ローン、リースバックなどを検討しましょう。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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