公開日:2024.01.24
原野商法は、1970年から1980年代にかけて多発したこともある土地に関する不当勧誘のひとつです。近年では、原野商法によって取得した土地をめぐるトラブルが増えています。原野商法の二次被害を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。
この記事では、原野商法の概要や二次被害の事例、トラブルを避ける方法を紹介します。
原野商法とは、値上がりの見込みがほとんどない山林や原野について、「将来確実に高値で売れる」などと勧誘し、不当に販売する商法です。
実際には建設計画がないにもかかわらず、「開発計画がある」「もうすぐ道路ができる」などと虚偽の説明をするのが典型的な手口で、1970~1980年代に被害が多発しました。
近年、この原野商法の二次被害が増加しています。二次被害の手法は以下のとおりです。
始めはすでに所有している不動産を買い取ることを勧誘しますが、巧妙な手口で売却額より高い山林や原野を新たに購入させられるトラブルが発生しています。
過去に原野商法に巻き込まれ、値上がりが期待できない土地を長年保有してきた高齢者の多くは「元気なうちに土地を手放したい」「相続で子どもに迷惑をかけたくない」という思いを持っているでしょう。悪徳業者はその気持ちにつけこんで、不当な勧誘や販売を行っていると考えられます。
原野商法の二次被害について、具体的な事例を2件紹介します。
相続で子どもに迷惑をかけたくなかったので、所有する原野を手放したいと思っていたところ、不動産業者から自宅を訪問され「約800万円で買い取りたい」と勧誘された。その際、意味がわからないまま書類に署名させられた。
業者が「気にしないで」と言うので信用し、手続き費用として約400万円を支払い、住民票と印鑑証明書、土地の権利書を業者に渡した。実際は、自分の原野を約800万円で売り、遠方の原野を約1,200万円で購入する契約となっていた。
出典)独立行政法人国民生活センター「より深刻に!「原野商法の二次被害」トラブル 」
40年前に30坪と100坪の山林を購入して所有している。「30坪のほうの山林を欲しがっている人がいる」と不動産業者から電話があり、売却することを了承した。その後、不動産業者から売却にあたって山林の調査や整地が必要と言われ、合計190万円を支払った。
30坪の山林を売却する前に、今度は「同じ人が100坪の山林も欲しがっているので調査費用80万円を支払ってほしい」と言われた。子どもは「原野商法の二次被害に手口が似ている」と言っている。
出典)政府広報オンライン「「原野商法」再燃!「土地を買い取ります」などの勧誘に要注意」
原野商法の二次被害にあうと、契約後はその不動産業者と連絡がつかなくなる場合がほとんどで、一度お金を払ってしまうと、そのお金を取り戻すのは困難です。過去に原野商法に巻き込まれて取得した山林や原野の買い取り話を聞いてしまうと、二次被害に繋がる恐れがあります。
そもそも取得した山林や原野はこれまで値上がりせず、開発計画もなかった土地です。「確実に値上がりする」「買いたい人がいる」といったうまい話は、そうあるものではないでしょう。「土地を買い取る」と勧誘されても、きっぱりと断ることが大切です。不審な勧誘を受けて困っている場合は、消費生活センターに相談しましょう。
相談先:消費者庁「消費者ホットライン」
原野商法の二次被害を防止するには、「土地を買い取る」と勧誘を受けてもきっぱりと断ることが大切だと分かりました。では、すでに持っている山林や原野はどうすればよいのでしょうか。原野商法で手にした土地を処分したい場合は、「相続土地国庫帰属制度」の利用を検討しましょう。
相続土地国庫帰属制度とは、相続で取得した土地を手放して国庫に帰属させる制度です。土地の所有者本人ではなく、所有者の相続人が利用します。将来原野商法で取得した土地を相続させたとしても、相続土地国庫帰属制度の利用によって国に返せる可能性があります。
ただし制度対象となる土地の要件がいくつか定められているため、生前に要件を満たせるように整備したうえで相続する必要があります。加えて、相続人となる人に相続土地国庫帰属制度についてあらかじめ話しておくことが大切です。
なお、相続土地国庫帰属制度はまだ開始されて間もない制度であり、今後どのように運用されていくか不明瞭な点も多いので、法務局や専門家に相談しておくと安心です。
原野商法の二次被害を防ぐには、「土地を買い取る」などの勧誘をきっぱりと断ることが大切です。うまい話は疑ってかかり、1人で即決せず、家族や友人、消費生活センターなどに相談しましょう。
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