2024.10.16

総量規制とは?利用者保護の仕組みと対象外のローンを詳しく解説

公開日:2024.10.16

総量規制とは、過度な借り入れから利用者を守るための仕組みです。貸金業者からの借り入れには、年収を基準に上限額が設けられています。ただし、借入先やローンの種類によっては、総量規制の対象外となることもあります。

この記事では、総量規制の概要や仕組み、総量規制の対象外のローンについて解説します。

総量規制とは

総量規制とは、借り入れができる金額の総額に制限を設ける規制です。貸金業法の改正により、平成22年(2010年)6月18日から実施されています。

個人が貸金業者から借り入れを行う場合、原則として年収の3分の1が上限となります。例えば、年収300万円の人が貸金業者から借り入れできる合計額は最大100万円です。住宅ローンなど、総量規制の対象外となる貸付もあります(詳細は後述)。

貸金業者とは、お金を貸し付ける業務を行っており、財務局または都道府県に登録されている業者です。具体的には、消費者金融や信販会社など(いわゆるノンバンク)が該当します。銀行もさまざまな融資を行っていますが、貸金業者ではありません。

出典)
金融庁「貸金業法のキホン」
日本貸金業協会「お借入れは年収の3分の1まで(総量規制について)」
日本貸金業協会「貸金業法について」

ノンバンクと銀行の違い

ノンバンクとは、銀行のように預金業務を行わず、与信業務(融資)に特化した金融機関です。貸金業法が適用されるため、ノンバンクが行う融資は総量規制の対象となります。
一方、銀行は貸金業法ではなく「銀行法」が適用されるため、総量規制の対象外です。銀行のローンなら、会社員でも年収の3分の1を超える借り入れができる可能性があります。

「何となく銀行のほうが安心」と思うかもしれませんが、ノンバンクと銀行では融資条件等の商品性が異なるため、自身の状況に合わせて最適な金融機関を選ぶことが大切です。詳しくは、以下の記事をご確認ください。

総量規制の対象となる貸付

総量規制は、貸金業者からの個人の借り入れに適用されます。具体的には、消費者金融のカードローン、クレジットカードのキャッシングなどが該当します。原則として、担保や保証人の有無、資金使途にかかわらず総量規制の対象です。

ただし、銀行のカードローンなど貸金業者以外の借り入れ、法人名義での借り入れは対象外となります。個人事業者が事業資金などを調達するために事業計画を提出し、返済能力があると認められる場合も年収の3分の1を超えて借り入れが可能です。

なお、クレジットカードのリボ払いや分割払い、ボーナス払いについては「割賦販売法」が適用されるため、総量規制の対象外となります。

出典)
金融庁「カシキン Q&A(事業者編)」
日本貸金業協会「お借入れは年収の3分の1まで(総量規制について)」

総量規制の除外貸付

次の貸付は、「総量規制になじまない」という理由で総量規制の「除外貸付」に分類されます。総量規制にかかわらず、年収の3分の1を超える借り入れが可能です。

  • 不動産購入のための貸付(住宅ローン)
  • 自動車購入時の自動車担保貸付(自動車ローン)
  • 高額療養費の貸付
  • 有価証券を担保とする貸付
  • 不動産(個人顧客または担保提供者の居宅などを除く)を担保とする貸付
  • 売却予定不動産の売却代金により返済される貸付 など

総量規制になじまないとは、定型的で貸付金額が高額であるなど、「年収の3分の1基準」を適用するのが不適当と考えられるものを指します。

除外貸付は借入額が借入残高に算入されないため、その後の借り入れに影響は生じません。例えば、年収300万円の人(総量規制の上限は100万円)が除外貸付の契約で100万円を借り入れても、上限は100万円のままです。

出典)日本貸金業協会「2 総量規制にかかわらず、お借入れできる貸付けの契約があります」

総量規制の例外貸付

次の貸付は、「顧客の利益保護に支障が生じない」として総量規制の「例外貸付」に分類されます。総量規制にかかわらず、年収の3分の1を超える借り入れが可能です。

  • 顧客に一方的に有利となる借り換え
  • 借入残高を段階的に減少させるための借り換え
  • 顧客やその親族などの緊急に必要と認められる医療費を支払うための資金の貸付
  • 社会通念上、緊急に必要と認められる費用を支払うための資金(10万円以下、3か月以内の返済などが要件)の貸付
  • 配偶者と併せた年収3分の1以下の貸付(配偶者の同意が必要)
  • 個人事業者に対する貸付(事業計画などで返済能力があると認められる場合) など

除外貸付とは異なり、例外貸付は借入残高の算定に影響が生じます。借入残高が総量規制の基準を超えた場合、その後は「除外貸付」「例外貸付」を除いて借り入れができなくなります。

総量規制に関する注意点とポイント

年収の3分の1を超える借り入れに対する制限

貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超えても、すぐに返済する必要はありません。ただし、新たな借り入れは制限されます。

出典)金融庁「貸金業法Q&A」

複数の貸金業者からの借り入れ

複数の貸金業者からの借り入れを行う場合、1社単独での借入額だけでなく、全体の合計が年収の3分の1以内であることが必要です。借入残高が年収の3分の1を超えると、新たな借り入れはできなくなります。

貸金業者が借入残高と年収を確認する方法

貸金業者からの借入残高のデータは、「指定信用情報機関」に集約されています。貸金業者は、指定信用情報機関を利用して借り手の借入残高を確認します。年収については、借り手から「年収を証明する書類」を取得して把握しています。

まとめ

個人が貸金業者から借り入れを行う場合、総量規制により年収の3分の1が上限です。ただし、住宅ローンや銀行のカードローンなど、総量規制の対象外となる借り入れもあります。金融機関のローンを利用する前に、総量規制について理解を深めておきましょう。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。
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