公開日:2023.04.12
京都市において、全国初の「空き家税」が2026年度に導入される見通しとなりました。空き家税は、利用されていない空き家や別荘などに課税する新たな税の仕組みです。京都市では、なぜ空き家税が創設されるのでしょうか。
この記事では、空き家税の制度内容や導入される目的、課税への対策について解説します。
空き家税とは、正式名称ではなく、京都市が創設する「非居住住宅利活用促進税」のことを指します。京都市では、令和2年(2020年)8月に有識者や市民公募委員などで構成される検討委員会を設置し、空き家や別荘所有者への適正な負担のあり方について議論を重ねていました。
その後、令和4年(2022年)3月に「京都市非居住住宅利活用促進税条例」が成立しました。令和5年(2023年)3月24日には総務大臣が空き家税の創設に同意したことで、令和8年度(2026年度)以降に全国初の空き家税が導入される見通しとなっています。
検討委員会の答申によると、空き家税を創設する目的は以下の2つです。
(1)住宅供給の促進や居住の促進、空き家の発生の抑制といった政策目的の達成
(2)現在及び将来の社会的費用の低減を図り、その経費に係る財源を確保すること
出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」
京都市の見解では、空き家や別荘、セカンドハウスなどの「非居住住宅(※)」の存在が、京都市への移住希望者や住宅供給を妨げ、防災や防犯、生活環境に関する問題の発生や地域コミュニティの活力低下の原因の1つにもなっているとされています。
※その所在地に住所(住民票の有無にかかわらず、居住実態の有無によって生活の本拠が判断される。)を有する者がない住宅のこと。
空き家の所有者に課税することによって、非居住住宅の有効活用を促す狙いがあります。また、空き家税の税収により、住宅供給の促進や安全な生活環境の確保といった施策にかかる費用の低減を図る方針です。
ここでは、京都市の空き家税の制度概要を確認していきましょう。
空き家税は、京都市内の市街化区域内に所在する非居住住宅が課税対象です。
非居住住宅の所有者が納税義務者となり、「家屋価値割額」および「立地床面積割額」の合算額を負担します(詳細は後述)。
次の非居住住宅については、空き家税が免除されます。
①事業の用に供しているもの又は1年以内に事業の用に供することを予定しているもの
②賃貸又は売却を予定しているもの※(事業用を除く)
③固定資産税において非課税又は課税免除とされているもの
④景観重要建造物その他歴史的な価値を有する建築物として別に定めるもの等
※ただし、1年を経過しても契約に至らなかったものは除く。
出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」
空き家税は「①家屋価値割」と「②立地床面積割」の2つがあります。それぞれの税額を計算し、足し合わせたものが空き家税の課税額となります。計算方法は以下のとおりです。
出典)京都新聞「京都市検討の別荘税「空き家」も幅広く対象に 課税額は物件価値で3段階か」
なお、②立地床面積割の税率は、固定資産評価額(土地)によって以下のとおり変動します。
固定資産評価額(土地) | 税率 | |
---|---|---|
立地床面積割 | 700万円未満 | 0.15% |
700万円以上900万円未満 | 0.30% | |
900万円以上 | 0.60% |
出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」
ただし、家屋価値割の課税標準が20万円(条例施行後の当初5年間は100万円)に満たない非居住住宅は免税となり、課税されません。
空き家税の賦課期日(課税の基準日)は毎年1月1日です。徴収方法は「普通徴収」で、京都市から送付される納税通知書で税額を納めます。
京都市に空き家を所有している場合、何もしなければ将来は税負担が増えてしまいます。ここでは、空き家税への対策を2つ紹介します。
1つ目は、所有している空き家を売却することです。売却して空き家を手放せば納税義務者ではなくなるので、空き家税を課税されることはありません。
また、実際に売却されていなくても、売却を予定している非居住住宅は課税が免除されます(1年を経過しても契約に至らない場合を除く)。将来住む予定がない空き家を放置している場合は、少しでも早く売却活動を始めるといいでしょう。
もう1つは、所有している空き家を賃貸に出すことです。非居住住宅であっても、賃貸を予定しているものは課税が免除されます(1年を経過しても契約に至らない場合を除く)。入居者が見つかれば、家賃収入を得られるのもメリットです。
ただし、賃貸に出すには、空き家を入居希望者に貸し出せる状態にする必要があります。物件の状態によっては、リフォームの必要があるかもしれません。
また、賃貸借契約や家賃の回収といった管理業務が発生し、入居者がいないと家賃が入ってこない「空室リスク」もあります。立地や間取り、築年数などから、賃貸に適しているかを見極める必要があるでしょう。
京都市が創設する空き家税がうまく機能すれば、今後は他の自治体でも導入されるかもしれません。利用していない空き家を所有している場合は、売却や不動産活用を検討しておいた方がいいかもしれません。
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