公開日:2022.07.27
「維持管理の費用がかかる相続した土地を手放したい」と悩んでいませんか。相続土地国庫帰属法の成立により、今後は相続した不要な土地を国に引き取ってもらえるようになります。ただし、対象となる土地には要件があるため、制度の内容を理解しておくことが大切です。
この記事では、相続土地国庫帰属法の概要やその制度を利用する際の条件、相続放棄との違いなどを解説します。
相続土地国庫帰属法とは、2022年4月28日に交付された「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」のことです。相続した不要な土地を国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。2023年(令和5年)4月27日に施行されます。
相続土地国庫帰属法が成立した背景には、「相続した不要な土地を手放したい」というニーズの増加があります。
都市部への人口移動や人口の減少・高齢化の進展などを背景に、相続によって望まない土地を取得したことで所有者の負担感が増し、管理不全を招くケースが増加しています。増加傾向にある所有者不明土地の発生を抑制するため、相続土地の所有権を国庫に帰属させることが可能となりました。
不動産を相続したくない場合は、相続放棄をするのも選択肢のひとつです。しかし、相続放棄ははじめから相続人ではなかったとみなされるため、相続財産(資産および負債)のすべてを放棄する必要があります。そのため、不要な土地・建物だけを放棄することはできません。
また、相続放棄をすれば土地の管理義務がなくなるというわけではありません。他の相続人が管理を始められるようになるまでは管理義務を負うことになります。
一方、相続土地国庫帰属制度は相続放棄と異なり、「相続開始を知ったときから3ヵ月以内」といった制限はありません。制度を利用するために負担金を払う必要はありますが、相続土地を国庫に帰属させれば管理義務はなくなります。
相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈により土地の所有権を取得した相続人が土地を手放して国庫に帰属させることを可能にする制度です。土地の管理コストの国への不当な転嫁やモラルハザードを防止するため、一定の要件を設定し、法務大臣が要件審査をすることとなっています。
単独所有の土地は、相続等により土地の全部または一部を取得した人が申請権者です。
複数人で共有している土地は、共有者全員で共同して承認申請を行います。共有者のうち、1人が相続等により持分を取得していれば、共同して承認申請が可能です。
相続土地国庫帰属制度を利用し、土地を手放すためには、「通常の管理・処分をするにあたり、過分の費用や労力を要する土地」に該当しないことが必要です。
具体的には、以下5つに該当する土地は承認申請が却下されます。
たとえば、建物が残っている場合は取り壊して更地にしなくてはなりません。抵当権が残っていると申請できない点にも注意が必要です。
また、以下5つに該当する土地は不承認処分とされます。
このように、相続した土地を国庫に帰属させるには一定の要件を満たす必要があります。却下・不承認処分のいずれも、行政不服審査・行政事件訴訟により不服申立てが可能です。
相続土地国庫帰属制度は、相続で取得して管理や処分に困っている土地を国に引き取ってもらえることがメリットです。土地の所有権が国庫に帰属されれば、相続した土地の管理から解放され、固定資産税の負担もなくなります。維持費のみがかかり、処分がしづらい山林なども制度対象です。
一方で、相続した不要な土地を引き取ってもらうには、10年分の土地管理費相当額の負担金が発生します。粗放的な管理で足りる原野で約20万円、市街地の宅地(200㎡)で約80万円が目安です。
また、制度対象となる土地が限定されるのもデメリットです。建物がある状態では引き取ってもらえないため、更地にしなくてはなりません。建物の構造や広さ、土地の状況によってはまとまった費用負担が生じる可能性があります。
相続土地国庫帰属制度の利用手続きの流れは以下のとおりです。
まずは承認申請書と政令で定める額の手数料を納めましょう。法務大臣には調査権限があり、必要に応じて実地調査が行われます。申請が承認されたら、承認通知を受けた日から30日以内に負担金を納付します。期限までに納付しないと承認が取り消されるので要注意です。
相続土地国庫帰属法の成立により、相続後に処分に困っていた土地を国に帰属させることができます。相続放棄とは異なり、土地だけに限定して処分ができることから、要件を満たせば維持管理に負担がかかる不要な土地を手放すことができるかもしれません。
相続した土地を手放したい場合は、相続土地国庫帰属制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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